約 220,421 件
https://w.atwiki.jp/kattenisrc/pages/891.html
352 :名無しさん(ザコ):2013/02/21(木) 23 49 30 ID qHg4CfMM0 洋風・ゴスロリ装備神姫(武装神姫) ゴスロリ服に巨大武装を施した趣味的なコーディネートの神姫。 性能は多少ENが低いのが気になる程度で可もなく不可もない回避寄りグレー系だが、 攻撃面は射程1中心なものの燃費の良さと速攻火力に優れ、さらに無消費1300や 射程4弾数武装も揃うので優秀。 さらに目を引くのが威力3000のドラゴンクラッシャー。その圧倒的破壊力は見ものだが、 気力150にEN消費100/140でほとんどの武装がEN消費型と制限が厳しい。 なので、無理に狙うより良燃費のニョルニルハンマーかバトルアックスで戦う方が、 活躍はさせやすいだろう。 ……と、思いがちだが、実のところ凄まじい使い方が隠されている。 それは、このユニットは『装備を統一した素体』なので固有のパイロットが存在せず、 神姫パイロットを自由に乗せることができるという点だ。 つまり、威力3000の武装を持つユニットに、魂のサイフォス、痛撃奇襲のフブキ、 熱血闘志の紅緒を乗せることができる、ということになる。 サイフォスを乗せた場合、ヴァッシュのAAより下程度の威力になり、イベント想定や 夢コンボを除いた最大ダメージでは単独首位の破壊力になるのだ。 ただし、サイフォスは気合もあり一発を狙うのは容易だが、防御型なので他の面が多少辛く、 一発は残して他でも活躍させたいならフブキか紅緒を乗せてもいいだろう。 と書いたが、実はこの組み合わせもイベント想定に近い代物になっている。 原作からいえばイベント用とは言い難く、普通に乗せ換え可能な程度なのだが、 データ的にはパイロットと素体は一致しているのが基本形となっている。 仮に乗り換えも考慮するならコーディネート神姫は大幅に火力を落とすか、 ネームドから三倍SPを削除するのは必須だろう。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/583.html
SHINKI/NEAR TO YOU Phase01-1 スポットライトに照らされた眩い舞台。 その縦横に光のラインが走る電脳空間を模したバトルフィールドに、エントリースポットから彼女が舞い降りたとたん、周囲から歓声が上がった。 「見てください。皆さん私の華麗なる姿を待ち望んでいたようですね」 「あのな、お前もう少しは緊張感持てよ」 沸き起こる歓声とは対照的なその少年の声に、彼女は蒼いポニーテールを振りながら答える。 「問題ありません、緊張する必要など皆無です。安心して私の戦いを見ているだけで結構、いわゆる〝大船に乗った気分〟ってヤツですね」 そう言って彼女は得意げに胸を張る。 その拍子に、身に着けている天使型武装のヘッドギアがずり落ちた。 「ドロ船の間違いじゃないだろうな……」 彼は軽く目頭を押さえると、成り行きとはいえこんな形で神姫バトルを行うハメになったことを、ひそかに後悔した。 * 先週まで咲き誇っていた桜も散り、街角ではそこかしこで新緑が芽生え始めている。 そんな暖かな陽気、まさに快楽日和……にもかかわらず駅前の広場に人がまばらなのは今日が平日ということからすれば仕方がない。 広場の時計台が刻む時間も当に十時を回っている。駅をゆく学生服や背広姿の群れも一段落し、桂樹駅は静かだった。 その駅のロータリーにある騎馬像(どこぞの芸術家が寄贈したとかいう話だ)の前に、ひとりの少年があくびを堪えながら突っ立っていた。 「全く、自分から呼んどいて遅刻かよ……伊吹のヤツめ」 独りでブツブツ言いながら、少年は所在無げにつま先で地面を蹴る。 そんな彼の仕草にベンチから声が掛けられる。 「しかしこの誘いを承諾したのはシュン自身です。ここで帰宅を選ぶということは、その約束を一方的に反故するも同然です」 その自身の内心を見透かした声に、シュンと呼ばれた少年は面倒そうに答える。 「こっちはもう三十分も待ってんだよ。……ったく、せっかくの休みなのに」 「待ち合わせの十時からは、まだ五分も経過していません。三十分近くも待つことになっているのは、わくわくして約束より大幅に早く到着したシュンの責任でしょう」 「誰がわくわくしてたよ? こんなに早く着いちゃったのは、お前が朝早くから急かすからだろうが」 苦い表情を浮かべながらシュンは傍らのベンチを見下ろす。そこでは先ほどからシュンに辛らつな意見を述べる声の主がチョコンと腰掛けている。 その〝彼女〟はジッと睨むシュンの視線に、抱えていたものを脇に置いて振り向いた。 「失敬な。それではまるで私が『遠足が楽しみでたまらないお子様』のようではないですか。言い掛かりです、激しく名誉毀損です。弁護士を呼んでください」 「あのなぁ、ゼリス。どこの世界に神姫専門の弁護士がいるんだよ」 キッと意味もなく凛々しい顔で彼のことを睨みつける少女――の姿をした彼のオートマトン(自動人形)――の姿に、シュンはいろいろな意味で間違っていると思った。 何がどう間違っているのかは、それはもう世界に聞いてくれ。 そんなくだらない訴えを脳の片隅に転がしつつ、シュンは隣に座る彼女を見やる。 蒼い豊かな髪をリボンで結ったポニーテール。 褐色の肌、理知的な翡翠の瞳。 神姫の中でも一際小柄で華奢そうだが、それを補ってあまりある存在感をまとった小さなフロイライン(お嬢さん)。 ――ゼリス。 彼女は彼、有馬駿(アリマ シュン)の武装神姫だ。 なぜ平凡な中学生だったシュンがこのいろいろな意味で普通じゃない神姫であるゼリスのオーナーになったのか? ふたりに尋ねればきっとこんな返事が戻ってくることだろう 「いろいろあって……(byシュン)」 「いろいろな事がありました……(byゼリス)」 どうやら彼らの関係には一般的な神姫とそのオーナーとは違った複雑な経緯があるらしい。 が、一週間も立てばそうした状況にも次第に慣れてくるもの。初めはゼリスに戸惑ってばかりだったシュンも、ようやく今後のことを考えるゆとりも出来てきた。 そんな訳でまずは神姫関連の様々なパーツを揃えようと、ふたりは最寄の神姫センターを案内してもらうため友人と待ち合わせの最中だった。 そもそも今日シュンたちを誘ったのはその友人、彼の幼馴染でもある伊吹からだった。 生粋の武装神姫バトルマニアである伊吹の誘いを、シュンは今日が創立記念日で中学校が休みであることと、先週の事件の反省から快く受けることにした。 しかし、ゼリスに尻を蹴られつつ(こんな言い方をしたらまた怒られるからシュンは口にしないが)待ち合わせに来てみれば、当の伊吹本人がまだ来ない。 シュンとしても今日の神姫センター行きはそれなりに乗り気だった分、何だか肩透かしを受けた気分だった。 「ところで……お前はさっきから何してるんだよ」 「シュン、見て分かりませんか? しばしの小閑に読書です」 そう答えゼリスは再び本を両手に持ち直し、ひとり読書のポーズ。電子書籍が一般化している中、彼女は昔ながらの紙の本を好んでいる。自分が電子化社会の代表選手のクセに。 身長14センチくらいの神姫が身の丈ほどもある文庫本を読んでいる光景は、見ようによってはなかなかシュールだった。 「それは見りゃ分かる。そうじゃなくて、お前はマスターである僕が待ちぼうけてるのに、それを無視してひとりで本読んでるんですか?」 「別に私が余暇を利用して何をしようと、シュンには関係ないでしょう? 過度のプライベートへの干渉は好ましく思えませんね」 「お前なぁ……。少しは自分のマスターの相手をしようとかは思わないわけ?」 シュンの言葉にゼリスは「ふむ」とその細い顎に手を当てながら逆に聞き返す。 「シュンは、私に相手をして欲しいのですか?」 不思議そうな様子で彼を上目使いに覗き込む、そのエメラルドの瞳に一瞬吸い込まれそうになり……はしたものの、すぐにシュンはシラケたようにかぶりを返した。 「いんや、そんなことはねーっすよ」 「ならば何の問題もありませんね。私は読書に没頭しますので、シュンも待ち人が来るまで現状維持に努めてください」 彼の投げ遣りな返事も意に関さず、ゼリスはそう述べると現状確認を済ませことに満足したのか、また読書の体勢に戻った。 そんな黙々と本読みにふけるゼリスを横目で見ながら、シュンは人知れず小さなため息をつくのだった。 神姫。それは自らの心を持ち、自らの意思で行動する全高15センチ程度のフィギュアロボの総称である。 様々な分野で活躍するロボットが存在する西暦2036年において、多様な機能、機構、機器を持ちオーナーである人間をサポートする、最も我々に身近な存在。 神姫とはオーナーとなる人間にとって、親友であり、家族であり、また愛しき娘でも恋人でもあった。いつしか人々はそんな彼女たち神姫の中で誰が最も美しく、優れ、そして強いかを競い合うようになった。 武装神姫。 様々な武器を駆り、装甲に身を包み戦う彼女らを人々はそう呼んだ。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/469.html
今日は終業式、明日からは夏休みだというのに、僕は学校を休んだ。しかも、仮病で。 単純に学校に行きたくないということもあるのだけれど、もうひとつ理由がある。 僕は武装神姫について、なにも知らない。今後、ネロと生活していくとすると、何が必要なのか、どのように接していけばいいのかなど、色々と調べる必要があった。 ・・・・・・そんな理由で学校休んだなんて、口が裂けても言えないけど。 とりあえず、昨日のうちに充電用のクレードルだけはなんとか入手できた。おかげで、所持金がほとんど無くなったけど。 家の中は、静まり返っている。祖父も祖母もまだ元気で、昨日から北海道へ旅行に行っていた。四泊五日の予定らしいから、しばらくは帰ってこない。と、 「ん・・・・・・」 クレードルの上で、ネロが目を覚ました。 「おはよ、ネロ。気分はどう?」 「おはようございます、慎一。久しぶりによく眠れました」 なんでも、彼女はあそこでずっとスリープ状態のまま過ごし、人が通りかかった時だけ起動して、助けを求めていたらしい。よくわからないが、大変だったということはわかる。 「それで、僕はこれからどうすればいいのかな?」 最初はネットか何かで調べようと思ったのだが、考えてみれば実物が目の前にいるのだ。ネロに色々聞いていく方が早い気がする。 「そのことで・・・・・・、あの、申し上げにくいのですが・・・・・・」 「ん?」 「このまま私を所持されますと・・・・・・、慎一が不法所持の罪に問われるのです」 ・・・・・・なに? 「私の本来のマスターは現在行方不明なのですが、マスター登録が解除されているわけではありません。ですから私は、あなたをマスターと呼ぶことができません。それに、所有権も元のマスターにありますので・・・・・・」 要するに僕は、他人の物を勝手に所持していることになる、というわけか。 「私は自分で本来のマスターを探しますから・・・・・・」 というネロの言葉を遮って、呼び鈴が鳴った。 あまり出たくはなかったけど、もし祖父母に関することだったら大変なので、僕は玄関へ向かった。すると、 「良かった、元気そうで」 来客は、同級生の上岡梓だった。 「はい、今日わけられた配布物。それと、始業式の予定」 「あ、うん・・・・・・。ありがとう」 彼女は明るくて、しかも優しい性格で、男女問わず人気があった。もちろん、男子にとってはその容姿も人気の理由のひとつなわけだけれど・・・・・・。 「・・・・・・おせっかいだったかな?」 ・・・・・・とか考えてたら、彼女はそう言った。 「あ、う、ううん」 とりあえずそう答える。と、 「慎一」 って、ネロ!? 出てきちゃダメだって・・・・・・! 「テレビの電源がつけっぱなしですが・・・・・・」 「あ、それ・・・・・・」 梓は目の前のネロをまじまじと見詰める。 「星野くんも、武装神姫やってるの?」 ・・・・・・も? 「うわあ奇偶! 私もやってるんだ。ね、その娘、なんて名前?」 僕にはもう、この流れを止めることはできなかった。 僕は覚悟を決めて、ネロに関する事情すべてを梓に話した。すると、 「そっか・・・・・・。ね、私になにか協力できること、ない?」 「えっ?」 協力って・・・・・・。 「ネロちゃんのマスター、私たちで探してあげようよ」 「え、いえ、しかし・・・・・・」 ネロは狼狽した。あ、困ってる顔、結構可愛いな。 「大丈夫。ね、星野くん?」 ・・・・・・そんな笑顔で同意を求めないで下さい。ともかく僕らは彼女に押し切られ、明日、近所のセンターで待ち合わせをすることになったのだった。 幻の物語トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/219.html
リンク名 ? いつか光り輝く 真面目な振りしておバカなネタの為だけにでっちあげられたお話。 画面サイズはXGA以上を推奨。 1.0 別の何か 2.0 あかいそら 3.0 遺品 ※HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとクロスオーバー 3.5 ラジヲ 武装神姫・お手紙相談室 4.0 融合~GとG ※HOBBY LIFE,HOBBY SHOPとクロスオーバー 凪さん家の十兵衛さんの第九話<GとJ> とリンク 人物設定 神姫(?)設定 装備品設定(暫定) 今日 - 人 昨日 - 人 累計 - 人 あちらの書き込み見ました。 いいネタなので様子見て使えそうならそのうち使おうと思っておりましたよ。 その辺どうなんでしょう、センセ(笑) -- Gの人 (2006-11-05 13 03 05) うわ。読みづらいから編集で改行したら履歴に載ってしまいました(汗)重ね重ね失礼。 -- Gの人 (2006-11-05 13 07 30) あふれ出る妄想を止める権利も術も、誰も持ち合わせてはいないのです。 -- 柏木ががが (2006-11-05 22 19 46) こちらにも。確認しましたー。わざわざお手数掛けて申し訳ないです。(礼)ネタは有り難く(笑) -- G (2006-11-06 01 05 01) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2857.html
中学を卒業し、春休み兼高校への準備期間といったところの3月。 卒業後の3月というのは夏休み並に長い休みとなり、宿題もないため基本的に卒業生は皆遊び呆ける期間ということになる。 「ユーリ、今日は負けないから……ねっ!」 「フン、甘いな!」 『行けマスター! そこだぁ!』 もうあらかた準備を終えている彼は、同じく準備を終えている「ユーリ」と呼ばれる友人の家に遊びに来ていた。 もっとももう3月の26日であり、入学式も近づいてくる頃。 のびのび遊ぶ余裕もなくなってくる頃であるのだが。 「……あっ」 (また負けた……) 『やったなマスター! またマスターの勝ちだぜ!』 「まあ俺のゲームだからな、俺が勝たずしてどうする」 (今日は自信があったんだけどな) 「しかしまあ飽きてきたな、そろそろやめるか」 「え、うん……そうだね」 (悔しいけど仕方ないか) 『今日もマスターの一人勝ちだな!』 「う……」 小さな褐色肌の銀髪の小さな、本当に小さな少女が言う。 『ま、お前もまあまあ強いけど、マスターが桁違いに強すぎて話にならないんだよな~』 「ふ、あまり褒めるな」 「あはは……」 2ヶ月前、1月中旬 「やったね、二人で合格!」 「あぁ、やったな」 ユーリは小さく左手を挙げた。 それに対して彼も大して右手を出し、ハイタッチ。 「……これで残りは遊べるね」 「フ、そう言うことにもなるな」 (僕達二人は同じ高校に合格。 4月には同じ学校に二人で通うことになった。 そして、合格が決まって数日後、月は変わって2月の頭にユーリの家に御呼ばれした時の話) 「……ぶそうしんき?」 「あぁ」 (……聞いたことあるような、ないような) 「合格祝いに買ってもらったんだ」 「へえ……どんなの?」 「俺の言うことには従順だし、いい話相手にもなってくれる。 ……いかにもお前が喜びそうだが」 (僕が喜びそうなもの? アニメか何かなのかな?) 『お? お前がマスターの友達ってヤツか?』 (……ん、この声って) 「あぁ、その通りだ。 紹介しよう、私の友人で……」 ユーリはフィギュアに向けて、彼の友人の説明を始めた。 ここだけ見れば、ちょっとおかしな人に見えなくもないが、そうではない。 (今……喋ったよね?) 『気の弱そうなやつだな。 まあ、マスターの友達ってんならよろしくしてやるか』 (やっぱり聞き間違いじゃない…… フィギュアが……しゃべった?) 「なにこれ、エンジェリックレイヤー?」 「ずいぶん古いなおい」 「……冗談はともかく……すごいね、どうなってるのこれ?」 冗談は、と言っているが彼にとっては割と本気であった。 「あぁ、これはだな……」 (その後10分程度、ユーリによる説明が入る。 つまりは着せ替えて戦うロボットアクションフィギュアだそうだ。 女の子ばっかりのメダロット……もしくはダンボール戦機。 いや、パーツじゃなくて武装を変えるだけなんだからカスタムロボだね。 つまり、この口の悪い一人称がオレ様の子も女の子、と) 「アニメに興味があるなら、こういうものもどうかと思ったのだが」 「確かに僕はオタクだけど、何でもかんでも好きになるわけじゃないよ」 (フィギュアはあんまり買わないし。 でもまぁ、これは可愛いとは思えるな) 「……とりあえず、この娘の声が小林ゆうさんだってことは分かる」 「悪いが俺は声優に関しては詳しくはない」 詳しくない人に声優の名前を言ってわかるわけがない。 『いやまぁ、正解だけどな』 「そうか、俺はそういうのは疎いが、劫火が正解と言っているのだから正解なんだろう」 「いや、かなり分かり易い声だと思うけど」 分かりやすい声であろうと、気にしなければ結構わからないものである。 「ちなみにこの子、名前はあるの?」 「あぁ、あるぞ。 『劫火(ごうか)』と名づけた」 「……はぁ、劫火」 (かっこいい、のかな、その名前は) 劫火とは世界を焼き尽くす大火のことである。 粗暴な態度であるとは言え少女にそんな名前をつけるということにこの少年は疑問を持った。 「劫火はヘルハウンド型のガブリーヌといって、地獄の番犬という設定なんだ」 と、ユーリに耳打ちされた。 (なるほど、ユーリが好きそうな設定だ) 『んでマスター、なんでこいつ呼んだんだ? オレ様を自慢するためか?』 「まぁな」 冗談交じりに笑いながらユーリは言う。 「こいつは俺と同じ学校に通う事になる。 それで、長い付き合いになるわけだ、お前にも紹介しておこうと思ってな」 『ふーん、同じ学校?』 「あぁ、お前も劫火とは長い付き合いになるだろうし、紹介は早いほうがいいかと思ったんだ」 (じゃあこれから一緒に遊ぶときは劫火も一緒になるわけなのかな) 「ところでお前は、神姫は買ったりしないのか? そもそも俺はお前が知らなかったことに驚きだ、こういうものに関してはお前の方が造詣が深いと思っていた」 (ぶそうしんき、ね……) 「……僕はフィギュアはあまり……買わないかな」 (可愛いのはわかるけどさ) 「まあ確かに、特にこれは高いからな。 ちょっといいパソコンが買える程度の値段はする」 (仮にもロボットなわけか、安いわけがないよね) 『ま、貧乏人には手の届かないもんってこったな』 「いや買おうと思えば買えるけどさ…… もう3月に発売のゲームの限定版を予約してるんだよね」 これが何故かゲームの値段の域をはるかに超えているとんでもなく高い品であり、お年玉を叩いてネットで予約したのである。 そのため現在彼は他の物を買う余裕がないのだ。 『ふ~ん? ま、なにに金を使うかはそれぞれだよな』 「うん、そういうことだよ」 (別にあまり興味はないし、まあいいかな。 買ったら買ったですぐ飽きるかもしれないし……でも) 彼にはひとつ、気になることがあった。 「ねえ、ユーリ。 『ぶそうしんき』って、どう書くの?」 「ん? あぁ、武器を装備するの意味の『武装』に、 『神』の『姫』と書くが……それがどうかしたか?」 (つまり、漢字で書けば『武装神姫』 ……やっぱり、最近どこかで……?) 彼はよくよく思い返してみると、最近『武装神姫』という単語をどこかで目にしたことがある気がしていた。 しかし、どうしてもそれを思い出すことができないのである。 「どうかしたのか?」 「いや、なんでもないよ。 ありがとう」 「む……そうか」 「あはははは……」 (僕はこの時、こんなものに興味は持っていなかった。 かわいいとは思うけど、数ある萌えキャラ系コンテンツの一つだと思っていた。 でも、この後あらゆる意味で意外な形で、意外な広い交友関係を持ち、意外な事件に巻き込まれていくことになるなんて…… 今の僕には、知る由もなかった) 回想終わり、再び3月26日。 「……もう3時か」 彼はなんとなく時計を見て言った。 「もう3時って、まだ3時じゃないか?」 『そうだぜ、まだオヤツの時間だ』 (まあ、普通ならそうなんだけど) 彼にとって、今日は普通ではなかったのだ。 「今日はちょっとね、この後用があるから」 「なんだ、そうなのか。 なら仕方ないな」 「ごめんね、もう帰るよ」 『じゃあ、また来いよな!』 ユーリと劫火の見送りを受けながら、彼は荷物をまとめて早々と退散した。 「ごめんユーリ、しょうもない理由で帰って」 ユーリの家の前でそう呟き、少年は自分の家へと早足で帰った。 そして彼が家に戻ると、見慣れない箱が届いている。 しかし、彼にはすぐその中身がわかった。 今日3月26日は予約していたゲームの発売日、コ○ミスタイルでの予約なので、今日はお届けの日、ずっと待ちわびていた日である。 「やっとこの日が来た! やっとこのゲームが来た! 『ハヤテのごとく!! ナイトメアパラダイス豪華版』! 本当に何故かかなり高かったけど、まあ関係ないや!」 そう、この少年はハヤテのごとく!の大ファンである。 ハヤテのごとく!の主人公、『綾崎ハヤテ』の姿に憧れたのがきっかけでその作品を愛するようになったのである。 もっとも、この少年をオタクの世界へ橋渡ししてしまった作品でもあるのだが。 「それじゃ、さっそく!」 少年はその箱を抱え、いつものように階段をものすごい勢いで駆け上がる。 二階の自分の部屋の扉を勢いよく開けると、机の上のPSPを持ち出してベッドの上に座り込んだ。 「PSPよし! 充電器もよし! 箱の状態もよし! オールグリーン!!!」 普段は控えめでローテンションな彼だが、ハヤテのごとく!のことになると性格が変わる。 流石にこれには友人であるユーリも苦言を呈している。 「それにしてもゲームソフトにしては大きな箱だな。 それだけ特典が豪華なのかな」 特別版ということは、予約特典、早期購入特典が多数付いているということである。 彼は特に特典の内容は気にせず、コナミスタイル販売限定の一番高い物をとりあえず予約したのだ。 『ハヤテのごとく!』の大ファンという理由だけで。 「いくぞっ! オープンっ!!」 満を持してその箱を開け。 「うぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」 中身を確認し、必要以上のリアクションをとる。 「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…… ……え?」 箱の中身を見た彼は必要以上のリアクション以上に驚きを隠せない様子を見せた。 何かが足り無かったわけでもなく、内容がそれほどでもなく拍子抜けしたわけでもない。 その中に、予想外の物が入っていたからだ。 「これって……まさか?」 箱の右側に収まっているゲームソフトへの興味はどこへやら。 左側に収まっている箱を手に取り、上下左右裏表、箱の外装をすみずみまで見回し、彼は静かに口を開く。 「武装……神姫?」 それはまぎれもなく、武装神姫だったのである。 「このパッケージ絵って……」 金髪ツインテール、ツリ目のライトグリーンの瞳。 そして、白皇学院の制服を模したカラーリングの素体。 少年にはそれに描かれている少女が誰か、一目で分かった。 「ナギ……?」 ナギ、ハヤテのごとく!のメインヒロインの名前である。 その武装神姫のパッケージに描かれていたのは、ハヤテのごとく!のヒロイン、三千院ナギその人だった。 「武装神姫……ナギ……!?」 驚きのあまり、再び声が出なくなった。 そして、ようやく理解した。 ナギのフィギュア付属が付属するというコナミスタイル販売限定豪華版だけが、異常に高かった理由が。 ユーリの言う「ちょっといいパソコンが買える値段」である、武装神姫が付属するのならば、それは当然高くなるわけである。 そしてこの時、やっと思い出したのだ。 約2ヶ月『武装神姫』という単語をどこで見たのか。 その場所は、彼がこの度予約したゲーム、『ハヤテのごとく!!ナイトメアパラダイス』の公式サイト及びコナミスタイルに書いてあった、 『コナミスタイル「武装神姫ナギ」付き豪華セット』という文字だったのである。 「……」 彼はゲームは基本初見プレイ派なので、公式サイトには通わなかったために、ゲームの予約以来目にすることがなかったのだ。 「……これでいいのかな? よくわからないんだけど……」 待ちわびていたはずのゲームソフトには手をつけず、ナギの箱を開封し、起動に手間取っている彼の姿がそこにあった。 やっとのことで設定は終わり、あとは起動させるだけである。 『お嬢様型ナギ。 セットアップ完了、起動します』 「え……もう? 起動するの? 本当に?」 驚いているうちに、その少女は金髪のツインテールをなびかせ、ライトグリーンの瞳を開きながらゆっくりと起き上がる。 『ん……』 その少女は目を閉じて背伸びをした。 「わぁ……!」 『……おぉ……お?』 その金髪ツインテールの小さな少女は眠たげな目こすりながら、『マスター』の方を向く。 「う……動いた……!!」 『……当然だ、動くぞ、神姫なのだから』 「……そ、そう、だよね」 聞きなれているツンデレ系ヒロインの鉄板である釘宮理恵ボイスが部屋に響く。 今さっき起動した金髪ツインテールの少女がツンデレボイスで、マスターだけに話しかけている。 アニメのように『綾崎ハヤテ』やその他キャラクターや、全国の視聴者に向けてではなく。 (ナギが僕だけに話しかけてくれている) 感動で胸が打ち震えた。 事前情報がなかった分、特に。 『……問おう。 お前が、私のマスターか?』 「え?」 ハヤテのごとく!特有のジト目を少年に向けながら、別のアニメの名台詞を言う。 二人称は変わっているが。 「……はい、かな?」 『……おい、もうちょっと乗れよ』 「い、いや、あのアニメは見てなくて……」 『途中で切るなよ、アニメの評価は自ら全て見て判断するのだ』 「……ごもっともです」 別に視聴を切ったわけではないが。 『む……』 少女渾身の目覚めのあいさつを躱されたせいか、少女の顔が明らかに不機嫌になったのが分かった。 『なんだか、あまり歓迎されていないように感じるのだが。 なんだ? もしや転バイヤーか? 起動して問題がなかったらリセットして売り飛ばすつもりか? ならば残念ながら未開封のほうが高かったと思うぞ』 「い、いや、生まれてこの方僕は転売なんてしたことないけど」 この少年はダブったトレーディングカードを売ったことすらないのである。 「その……驚いたから」 『驚いた?』 「うん……神姫を手に入れるつもりなんてなかったから…… まさか、ゲームの特別版の特典で付いてくるなんて」 『……なんだ、公式サイトを見ていないのか? ちゃんと神姫ナギが付属すると書いてあったと思うのだが』 「はい、確かに書いてあったんですけれども」 公式サイト及びコナミスタイルで予約時に二目見て以来今まで忘れていた、とは言えないわけである。 「その、僕予約の内容とか気にせずに予約するから」 『……』 その少女は顔を背ける。 『それでは私が傷つくではないか……』 「え、え?」 『だってお前は、私を心からは必要としていないんだろう?』 神姫というものは基本的には買った人に必要とされているからこそその人の下へ行くのであるが、 この少年の場合は『武装神姫ナギ』が付属することを知らなかったわけである。 捉えようによっては、必要とされていない、とも感じてしまうかもしれない。 「そ、そんなことないよ! えっと……お、お嬢様?」 『ん、お嬢様?』 「だって君はナギなんでしょ? だからお嬢様」 この神姫である少女の元となった人物、ハヤテのごとく!のヒロイン、三千院ナギは圧倒的材力を持つお嬢様、という設定である。 『あぁ、そういえば設定がまだだったな』 「え、せ、設定?」 『……神姫を手に入れる予定がなかったのなら知るわけがないな。 仕方ない、教えてやろう、まず私のマスター……つまりお前のことを私がどう呼ぶかを決めるのだ』 「ま、マスター……」 『あぁ、マスターになる気はないのだったか? 別になりたくないのならいいぞ、誰かハヤテ好きの知り合いにでも引き取ってもらえ。 それかやっぱりヤ○オクにでも出したらどうだ、私としても私を落札してくれるなら大事にしてくれるだろうからな』 「い、いや、なります! えっと、僕、ハヤテのごとく!が大好きですから!」 『……そうか。 その言葉に、嘘はないな?』 「ありません!! 絶対に!」 『……ほう』 「……」 少年は15年間生きてきて中で一番今までになく真剣な目を少女に向けて言った。 『ならばお前は。 私とハヤテの出会った時の、ハヤテの告白のシーンを一字一句言えるのか?』 「……」 沈黙が走る。 目を閉じて、息を整えた。 『まあ、流石にそれは冗談……』 少女が言い切る前に少年はゆっくりと目を開け、口を開く。 「僕と…付き合ってくれないか?」 『へ?』 彼女に確認をとる間もなく、それを演じ始める。 「僕は君が欲しいんだ」 『なっ……』 ナギに真剣さが伝わる。 先ほどとはまるで違う気迫に、思わず後ずさりをしてしまうほど。 「わかってるさ!! だがこっちだって本気だ!!」 『……』 その真剣な眼差しに思わず彼女は…… 『で…でも!』 そのシーンのナギの役を、無言で引き受けた。 「こんな事、冗談じゃ言わない…」 吐息のかかる距離。 完全に役にのめり込む二人。 「命懸けさ…… 一目見た瞬間から… 君を…」 犯罪者の目。 ……をするハヤテを完璧に演じる。 「君をさらうと決めていた。」 『………………』 「………………」 二人はしばらく見つめあう。 そして、『ナギ』は口を開いた。 『本気の想い…… 伝わったぞ』 「…… シャキーン」 『擬音まで言わんでいい』 「……ごめん」 『……フ』 彼女は笑顔で『ハヤテ』に言う。 『合格だ。 お前の想いは本物だな』 「君に合格をもらえるなんて……光栄だな」 『私も、お前がマスターならば安心できそうだ。 さっきの言葉は撤回しよう』 (ハヤテのごとく!を好きでよかった) 少女の言葉を聞き、少年は心からそう思った。 『では、続けよう。 なんと呼んでほしい?ご褒美にできるだけ希望に応えてやるぞ』 「呼び方……か」 なんて呼んで欲しい? 少年はそう言われたのは初めてだ。 「……ピンと来ないよ」 おそらく、それが普通である。 「例えば、どんなの?」 『そうだな、普通ならば「マスター」やら、お前の名前やら。 それとも「私の執事」、とでも呼ぼうか。 そうだ「バカ犬」でもいいぞ。 望むなら「兄さん」とも呼んでやらないこともないが』 バカ犬、兄さん。 どちらもハヤテとは関係のない作品である。 声を当てている声優は同じであるが。 その縁でハヤテのごとく!でネタにされたこともある。 『……推奨は全くしないが、「下僕」やら、「豚」やら、「そこのお前」、「そこの人」でも』 「……普通に僕の名前で」 ナギの姿の少女にバカ犬およびほかの呼び方で呼ばれても違和感しかない、とハヤテは考えた。 きっとそれはハヤテのごとく!よりとらドラ!やゼロの使い魔がのほうが好きな人でも同じことであろう。 『まあそれが無難だな。 では……あ』 少女は何かを思い出したように、話を中断し口が空いたままにした。 『そういえば、名前を聞いていなかったな。 お前、名前は?』 「名前……僕の?」 『そうだ、どうした、早く言うがいい』 「うん……僕の名前は」 吐息のかからない距離。 机の上の少女の眼を真っ直ぐと見て、少年はその名を言う。 「ハヤテ」 『え?』 「鷹峰 颯(たかみね ハヤテ)。 僕が憧れた君の執事と……同じ名前だ」 ハヤテのごとく!の主人公、綾崎ハヤテはヒロインである三千院ナギの執事という設定である。 その、自身と同名の『綾崎ハヤテ』の、何があっても、どんな不幸があっても挫けずに立ち向かっていく『ハヤテ』の姿に。 『ハヤテ』にハヤテは憧れた。 『ハヤテ』の勇姿を見た瞬間……彼はハヤテのごとく!のファンになったのだ。 『ハヤテ……か……お前……』 「ん?」 『……まさか名前を詐称などしていないだろうな?』 「してない! ええい!! だったらこれを見よ!」 ハヤテは生徒手帳を取り出し、個人情報の乗っているページを見せた。 まだ高校に入学していないため中学時代の生徒手帳であるが。 『おぉ……!! こ……これは……!!』 「ふふん」 『随分と無愛想な顔の写真だな』 「君に言われたくないし見るべきところはそこじゃない! それにその時は眠かっただけ!」 『おぉー、本当に名前はハヤテではないか!!』 「だから最初っからそう言ってるじゃない! ……流石に苗字は綾崎じゃないけどね」 ちなみに『綾崎』及び『三千院』という苗字は実在しないそうです。 『まあ、ならばいいのだ。 なんというか、呼びやすくて良い』 「それは……よかった」 『では、次は私の名前だ。 いい名前をつけるのだぞ、一生物なのだからな』 「え?」 名前。 (この少女に付ける名前なんて一つしかない) ハヤテはそう思うのだが、一応聞き返す。 「ナギじゃ……だめなの?」 『いいや、ダメではない。 だが、ゲームでもデフォルトネームと言うものがよくあるだろう? 私で言えば「ナギ」はデフォルトネームなのだ、別に変えてもかまわないぞ。 別に魔法少女モノが好きならフェイトと呼んでくれてもいいし、全く関係ない名前をつけても構わないのだ』 そう言うことなのか、とハヤテは納得する。 しかし、ハヤテにとってはこの少女を『ナギ』以外の名前で見ることはできなかった。 「でもやっぱりナギはナギじゃないと……しっくり来ないな」 『そうだな、キャラクターの名前をデフォルトネーム以外に変えてプレイすると人によっては違和感を覚えるかもしれん。 面白味のない遊び方ではあるが、それはそれで懸命な判断だな』 「そ、それはどうも……」 『ということは、私の名前は「ナギ」でいいんだな?』 「うん、もちろん」 『わかった、それじゃあ私の名はナギだ。 よろしく頼むよ、ハヤテ』 ナギはハヤテに向かって微笑んだ。 「う……!」 その笑顔にハヤテは思わずキュンとしてしまった。 この瞬間、ハヤテの中でナギの株が鰻登りになったことは言うまでもない。 『ところで、早速だが私は疲れた。 クレイドルを出してくれ』 「……」 『……おい、ハヤテ?』 「えっ? あ、あぁ、はい、何?」 『……クレイドルを出せと言っているのだ』 「く、クレイドル?」 『私の入っていた箱に一緒に入っていなかったか?』 その言葉を聞いて、ハヤテは箱の中を探す。 すると、比較的大きめな白い物体を見つけた。 「えっと、これ?」 それを取り出してナギに見せつける。 『おぉ、それだそれだ!』 ナギは早く早く、と言わんばかりにクレイドルに向かって両手を伸ばしている。 「えっと、どう設定すればいいの?」 『適当に組み上げてUSBのケーブルをパソコンに差し込めばいい』 (大雑把すぎるって……) そう思いつつもハヤテはナギのために設定をする。 パソコンにUSBケーブルをつなげるという組み上げると言っていいのかわからないほど短い手順であったが。 「……組み上げた(?)けど」 パッと見ハヤテには、この物体の正体が何かわからなかった。 「これ、何?」 『簡単に言ってしまえば、充電器だ』 (これで充電器なんだ) 「でもこれ……どうやって充電するの? ナギにこれのどこかにある何かを差し込めばいいの?」 『いいや』 ナギはクレイドルの上に乗り、それに横たわりながら言う。 『この上で寝ていれば、勝手に充電されるのだ』 「……へぇ」 (最近の充電器って、進歩してるなぁ) そう思いながらハヤテはつぶやく。 「……科学の力ってすげー」 『まぁというわけで私は寝るぞ、起動したばかりでエネルギーが少ないのだ。 夜には充電が終わるはずだ、話なら後にしてくれ』 「え、あ、あの……」 『Zzz……』 ハヤテが止める間もなく、ナギはクレイドルで眠りについてしまった。 「…… 武装神姫、か」 ひょんなことから、神姫のマスターになってしまった少年、鷹峰ハヤテ。 これは、ナギや友人とともに駆け抜けた、ハヤテの激動の高校生活を綴る物語である。 プロローグ 「悪夢の楽園より」 完 次回『ナギのごとく!』 『なんだ、お前ニートじゃなかったのか』 ハヤテ「あくまで、執事ですから……」
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2467.html
キズナのキセキ ACT0-6「異邦人誕生 その1」 ◆ あの暑い夏の日以来、『ポーラスター』には行っていない。 武装神姫の雑誌も手に取りはしなかったし、ネットで情報を集めることも、いや、ネットにつなげることさえしていない。 放課後は時間が余った。 クラスの友人たちが、男の子と一緒の集まりに誘ってくれて、一度は参加したが、気が晴れることはなかった。 二度と参加する気はなかったし、誘われることもなかった。 学校には黙々と通い、勉強したから成績も上がったが、だから何の意味があるというのだろう。 あれから三ヶ月たった。 あの暑さの面影はどこにもなく、冬の足音が聞こえてきている。 だが今も、心の傷は癒えることなく、疼き続けている。 とても大切なものを、一番大切な人に壊された。 久住菜々子は今も笑えないままでいる。 ◆ 久住頼子はため息をつき、孫の様子を眺めている。 唯一の孫であり肉親でもある久住菜々子は、自室の机に向かって宿題を黙々と片付けている。 菜々子は、中学二年の秋の様子に逆戻りしていた。 笑わなくなった。 いつもやぶにらみで、誰も信用しない。 話をするのも、クラスで仲がいい数人と、頼子くらいだった。 美貌に影を落とし、近寄りがたい雰囲気を放ち続けて、もう三ヶ月が経つ。 頼子は考えを巡らせる。 そろそろ何か手を打たなくてはならない。 高校時代は短く、しかしまばゆい輝きを放つ、かけがえのない青春の時間だ。 それをこんな風に暗い色で塗りつぶしては罰が当たろうというものである。 ここは、孫のために一肌脱ごう。 そう心を決めると、頼子は腕まくりして、肩をいからせた。 ◆ 「あなたにプレゼントがあるのよ」 「……またそのパターン?」 菜々子が呆れて、深いため息をつく。 だが、頼子には全く悪びれる様子がない。 「あらー、覚えててくれたのね」 「頼子さんのお節介に付き合ったのはあれが初めてだったから、印象深くて」 「じゃあ、わたしが何を出してくるのかも当ててみる?」 「そんなの、言うまでもないわ」 にこにこ顔の頼子に対し、菜々子はこれ以上はない仏頂面だ。 この状況で頼子さんからのプレゼントと言ったら、武装神姫以外にはあり得ない。 菜々子が落ち込んでいたこの間にも、頼子さんは飽きもせずに神姫センターにせっせと通い、ファーストリーグへと昇格していた。 菜々子は今さら神姫のオーナーになる気はなかった。 ミスティこそ、自分のただ一人の神姫だと信じていた。しかし、そのミスティはもういない。 「まあ、武装神姫なんだけど。とりあえず見なさいな」 答えは予想通り。いや、予想するまでもない、決まりきった答え。 だが、頼子さんがちゃぶ台の上に置いた箱は、菜々子の想定外だった。 「これ……見たことない」 「菜々子がしょぼくれてる間に、新発売になったのよ。新規参入、オーメストラーダ社の最新型」 汎用性の高さ故、多くのマスターたちが好んで使っている、フロントライン社のストラーフやアーンヴァルとは明らかに異質な武装。 装甲は流麗なカーブを描き、タイヤが全部で三つ装備されている。 ハイマニューバ・トライク型 イーダ……それがこの武装神姫の名前だった。 真新しい神姫を前に、興味がないと言ったら嘘になる。 どうしても止められない胸の高鳴りは、二年あまりの間、毎日培ってきた武装神姫への興味のたまものだ。 しかも、自分が知らない新製品である。 触れてみたいと思わない方がおかしい。 だが、喜んで触ってしまっては、頼子さんの思うつぼだった。 今回は、中学生の時のようには行かない。 「……いらないわ」 「……そう? 言い忘れてたのだけど」 頼子さんが不適に笑った。 「この神姫のコアは、ミスティのものに換装してあるわよ」 その一言に菜々子の心は射抜かれた。 ミスティはマグダレーナに完膚無きまでに破壊されたが、コアは比較的無事に残っていた。 だからといって、新しい神姫にそのコアを移植する気にはなれなかった。 そうこうしているうちに、このお節介な祖母が、勝手にコアを換装してしまったというのだ。 お節介にもほどがある。 そう思いながらも、菜々子は努めて平静を保ちながら、イーダの入った箱をいそいそと自室に運んだ。 頼子さんはお茶を飲みながらほくそ笑んでいたようだが、気にしないことにした。 ◆ 期待と不安を、心に入り交じらせながら、菜々子はセッティング作業を行う。 ミスティが使っていたクレイドルは、この三ヶ月の間に埃だらけになっていた。 菜々子は埃を丁寧に拭うと、箱の中からイーダ型の素体をそっと取り出し、クレイドルの上に乗せた。 紫色のロール髪が可愛らしい。 菜々子は久しぶりに少し胸を高鳴らしながら、PCから登録画面を呼び出す。 おなじみのオーナー登録。イーダ型の口から流れる声に少し戸惑う。 登録作業はスムーズに進み、ついにイーダ型が起動した。 瞳に光が宿り、ちょっと気が強そうな表情で、菜々子を見上げてくる。 「あなたがナナコね?」 「え? ……ああ、そう……だけど……」 「もっとちゃんとして、わたしのマスターなら。……はじめまして。わたしはミスティ。これからよろしくね」 菜々子は面食らった。 なんだ、この神姫は。 わたしは今さっき、確かに、オーナーの呼び方を登録したはずだ。 「ちょっと……わたしの呼び方は、マスターで登録したはずだけど」 「いいじゃない。名前で呼んだ方がフレンドリーで」 菜々子はミスティの物言いにカチンと来た。 そして、心に失望が満ちる。 この神姫はミスティじゃない。断じて、ない。 ミスティのコアを使っているとはいえ、ヘッドもAIも新調されている。おまけに別機種だから、基本の性格設定もストラーフのミスティと同じになるはずがない。 そんなことは分かっていた。 だが、菜々子には淡い期待があった もしかしたら、ただ素体が換装されただけで、正確も記憶も受け継いだミスティが起動するのではないか、と。 淡い期待は粉みじんに撃ち砕かれた。 ミスティはわたしを呼び捨てにしたりしない。 ミスティはこんな口調でしゃべったりしない。 ミスティは生意気に口答えしたりしない。 ミスティはこんな居丈高な態度をとったりしない。 「ふざけないで」 自分でも驚くほどに暗く、寒々とした口調。 そして本心をオブラートに包むことなく口にする。 「あんたがわたしの神姫だなんて……絶対に認めない」 それを聞いたミスティの両目が見開かれ、絶望に暮れた顔を見せたが、菜々子は無視した。 すると形のいい眉を釣り上げ、果敢にも、生意気にも、ミスティは言い返してきた。 「わがまま言ってんじゃないわよ! ちゃんと電子頭脳に登録されてるんですからね! オーナー登録したのはナナコだって!」 「だから、勝手に呼び捨てするなって、言ってるでしょう!」 「別にいいでしょ! わたしがそう呼びたいんだから!」 「よくない! ちゃんとマスターって呼びなさいよ!」 「ふーんだ、ナナコ、ナナコナナコ!」 「こっの……わがまま神姫!」 二人の口論は延々と続いた。 これが菜々子とイーダのミスティの出会いの夜だった。 ■ 「わたしたちは決して良好な関係で始まったわけじゃなかった。むしろ最悪だったわね。二人とも意地っ張りだから、お互いの主張は平行線で、歩み寄る様子もなかったわ」 ミスティはまた苦笑する。 いつもの自信に溢れた笑いではなくて、どこか陰のある笑い方。 「でもね……わかる? 起動してすぐ、『自分の神姫として絶対に認めない』って言われたときの気持ち……。 あれはキツかったな。起動していきなり、絶望に突き落とされた気分だった。 だから、怒りを奮い起こして、懸命にすがりついたの……ナナコに。 あの日から、わたしの戦いが始まった……初代のミスティに挑む戦いが」 もうやめて、とわたしは言いたかった。 ミスティがコアの内に秘めている過去の記録を、無理矢理聞き出しているような気分だった。 ミスティにとってつらい思い出なら、これ以上話さなくていい。話すべきじゃない。 でも、わたしは言えなかった。 ミスティはわたしを見つめながら話していたから。 わたしは彼女の話を聞かなくてはならない。親友として。その責任を果たすために、彼女の言葉のすべてを聞かなくちゃいけなかった。 ◆ 一週間ほど後、菜々子はミスティを連れて『ポーラスター』へ向かった。 気に入らないとはいえ、武装神姫を手に入れたのだ。 つまり戦う手段を再び手にした……お姉さまとその神姫に挑む手段を。 菜々子の意志は、昏い情念に燃えていた。マグダレーナを破壊し、お姉さまに復讐する。わたしと同じ気持ちを、お姉さまにも味あわせる。 そのためには、この生意気な神姫を強くしなくてはならない。たとえ気に入らない神姫であっても、今はわたしの武器だ。 「……久住ちゃん……久しぶり」 「ご無沙汰でした、花村さん」 『七星』のリーダー格である花村耕太郎は、菜々子を心から心配そうに出迎えてくれた。 「大丈夫なのかい?」 「ええ」 「……ほんとうに? 無理してないかい?」 「大丈夫ですから、今日から復帰です」 菜々子は少し苛立ちながら、言い切った。心配してくれるのはありがたいと思うが、腫れ物に触るような態度は、菜々子の望むところではない。 むしろ花村は、菜々子の態度に、さらに心配を深めていた。 菜々子は笑わない。まるで、初めて『ポーラスター』に来た頃の……『二重螺旋』を結成する前の『アイスドール』そのものだ。 笑顔が絶えなかった菜々子の心は、初めて出会った頃に逆戻りしているのではないか。 その原因が、菜々子を笑顔にしていた理由……桐島あおいなのだろうから、なおさらやりきれない。 だが、菜々子の深い絶望は、花村の想像を超えていた。 久しぶりのバトル、その第一戦から、菜々子の怒りが炸裂した。 「なにやってんの、あんた! そんな動きも出来なくて、勝てるわけないでしょうが!」 菜々子の神姫は、今話題のオーメストラーダ社の新型だ。 起動して間もないのだろう、武装もセッティングもノーマルのままであることは伺い知れる。 にもかかわらず、菜々子はかつての愛機・ストラーフのミスティ同様の戦い方を強要した。 もちろん、そんなことが出来るはずもない。 大型の副腕を持つイーダ型は、ストラーフ型と似ているから対比されることも多いが、戦い方は全く異なる。 そもそもイーダ型の副腕は独立稼働しないし、ストラーフのような頑健なレッグパーツがあるわけでもない。 イーダ型の特長は、それらを補ってあまりある、トライクの高機動性と変形機構にある。 それを生かさずして、バトルでの勝利は望めない。 しかし、菜々子は、ふがいない戦いを続ける彼女の神姫を罵り続けた。 的確な指示も出さないくせに、試合に負けたことをすべてミスティのせいにする。 ミスティはいちいち菜々子に食ってかかり、二人は激しい口論を繰り広げる。 そして、必ず最後に、 「あんたがわたしの神姫だなんて、絶対に認めない」 まるで決めゼリフのように言って、ミスティを黙らせた。 これには『ポーラスター』の常連たちも、辟易した。 自分の神姫にそんな言葉を、衆人環視の中で堂々と投げつけるなんて、ありえないことだ。 自分の神姫を虐げているとしか思えない。 今の菜々子は実に見苦しかった。 ◆ 「起動したばかりの神姫で、そんな戦い方は無茶だ。わからない久住ちゃんじゃないだろ?」 「そんな生ぬるいこと言ってちゃ、お姉さまには勝てない」 花村が諭す言葉を菜々子はまるで意に介さない。 花村の心配は的中していた。 菜々子はにこりとも笑わない。バトルスタイルは、勝利優先に逆戻りしている。 まるで初めてあった頃の菜々子のようだ、と花村は思い、いや、と首を振った。 もっとひどい。 瞳は昏い情念に燃え、心は復讐にとりつかれている。姉と慕った人を倒すことしか頭にない。 それを自らの神姫に押しつけ、痛罵する。 今の菜々子は見るに耐えない。 このままでは、次の『七星』候補などと言うことはできなくなる。 花村は呆れたように吐息をつくと、どうしたものかと思案した。 □ 「その直後だな。菜々子ちゃんが初めてこの店に来たのは」 日暮店長がミスティから話を引き継ぐ。 「花村くんが連れてきたんだ。エルゴに集まる常連さんたちはくせ者ぞろいだから、菜々子ちゃんにもいい刺激になるかも知れない、ってな」 肩をすくめて言う店長に、ミスティは苦笑した。 「まあ……それでわたしは大変な目にあったわけ。今思い出しても、我ながらよくやったと思うわ」 店長もミスティを見つめて苦笑した。 この店でも何かあったらしい。 ミスティと出会った頃の菜々子さんは相当荒んだ性格だったようだ。 さもありなん、と思わないでもないが、今の菜々子さんの姿からは想像するのが難しい。 実際、ミスティの話を頭の中で想像しようとしても、できなくて困る。 大城も同様だったようで、俺たちは二人して首をひねっていた。 ◆ その客は、あまり乗り気そうじゃない少女の手を引いて、強引に店に入ってきた。 「店長、こんにちは」 「いらっしゃい、花村くん」 ホビーショップ・エルゴの店長、日暮夏彦にしてみれば、花村耕太郎という青年が、これほどの美少女を連れてくることが驚きだった。 しかし、この上もなく不機嫌そうな表情が、美貌を台無しにしている。笑えばさぞかし魅力的だろうに。 日暮は花村に、店の奥の階段を目配せした。 彼のお目当ては、エルゴの二階、バトルロンドの対戦コーナーだ。 数日前、日暮店長は花村から電話で相談を受けた。日暮は快く、彼の相談内容の根回しを行った。 いま二階では、花村の策謀が、今や遅しと待ち構えている。 花村は日暮に軽く会釈し、菜々子を連れて、二階へと上がった。 エルゴの二階は、バトルロンドの対戦スペースとして開放されている。 『ポーラスター』に比べたら、規模は随分小さいが、それでも観戦用の大型ディスプレイや、一休みできるラウンジなどが備えられており、神姫プレイヤーにはとても居心地のいい空間に思えた。 花村と菜々子は、奥のテーブルの一つに向かい合って座る。 端から見れば、ちょっとしたデート中のカップルに見えるだろうか。 花村としては、本当はそうであれば嬉しいのだが、いかんせん、向かいに座る彼女は、これ以上ない仏頂面だった。 花村は、自販機で買ってきたジュースを菜々子に手渡す。 無言で受け取った菜々子は、それを手にしたまま、大型ディスプレイに映し出されるバトルに目を向けていた。 「どうだい、いいバトルしてるだろ?」 そう言った花村をじろりと見る。 花村は観戦用の大型ディスプレイに目を向けたまま楽しげだ。 仕方なく、菜々子もディスプレイに視線を向けた。 確かに、ぱっと見ただけでも、素晴らしい対戦ばかりが繰り広げられていることがわかる。 片目に眼帯をかけたストラーフ型は、接近戦メインかと思えば、スイッチが切り替わったかのように、精密射撃で敵を翻弄している。 同じストラーフ型でも、燐というバトルネームの神姫は、空中で華麗な機動を決めて、相手を倒す。 あるツガル型はまったくのノーマル装備だったが、実に多彩かつクレバーな戦いぶりを披露している。 ノーマルと言えば、アーンヴァル型の一人は公式武装のみのカスタムだ。マイティという彼女もまた、華麗な戦いぶりを披露している。 その相手は、ありえないほどのジェット推進装備を施しているマオチャオ型。あんなのでコントロールできるのかと思いきや、光学武装による分身攻撃さえ見せつけた。 そして、大型ディスプレイにドレスアップされたハウリンが映し出されると、周囲の観客のボルテージが上がる。相当人気の神姫なのか、観客からかけ声すら上がっていた。 この盛り上がりを、菜々子はどこか懐かしく感じた。 そう、ここのバトルのあり方こそは、わたしとお姉さまが追い求めていた理想に近い。 まだ『二重螺旋』が現役だった頃は、こんな楽しさが『ポーラスター』でも感じられた。毎日のように。 だが、菜々子はそんな感傷を振り払う。 やぶにらみのまま、花村に言った。 「試合内容がどうあれ、勝てなかったら意味ないわ」 ゴスロリドレス姿のハウリンは、次々と武器を取りだしては攻撃し、相手を翻弄する。 非武装派の神姫と見せかけて、実はバリバリ武闘派の暗器使いだったらしい。 やがて、必殺技を派手にたたき込んだハウリンが、勝利者になった。 ギャラリーの盛り上がりは最高潮に達した。 まるでプロレスみたいだ、と菜々子は思った。 勝負を見せるのではなく、試合展開や凄みを見せるもの。 それは今の菜々子が求めるものではない。 「ここの人たちがおもしろいバトルをしてるからって、強いとは限らない。強さが伴わない魅せる戦いなんて、大道芸にもならないわ」 あまりに痛烈な菜々子の物言いに、花村は言葉を失った。 だが、代わりに言い返そうとする声が響いた。 「聞き捨てならないわねー」 にこやかに笑って、二人のテーブルのそばに立ったのは、女性だった。 長い黒髪に、はっとするほどの美貌。 肩の上にいるのは、さきほど観客たちを盛り上げていた、ドレス姿で戦うハウリンである。 「戦いは強く美しく。武装神姫はそうでなくちゃ」 美貌のマスターは、魅力的な微笑を浮かべながら言い切った。 菜々子は胸を突かれる。 彼女の姿に、一瞬、おあいお姉さまの姿がダブって見えた。 昔の桐島あおいは、こんな風に笑いながら、同じようなことを繰り返し菜々子に語ったものだった。 ただの感傷だ。 菜々子は首を横に振り、幻影を振り払う。 気が付くと、先ほどからのバトルで興味を引かれた神姫とそのマスターが勢ぞろいしている。 「みんな集まってるわ、花村くん」 黒髪の美少女マスターの声に、花村はほっとした顔で頷いた。 そして、菜々子の方に向き直り、こう言った。 「君がそこまで言うなら、実際にここの常連さんたちと戦ってごらんよ」 「え?」 「勝つためだけのバトルが本当に正しいのか否か、彼らを相手に試してみるといい」 「なんでわたしがそんな……」 「今の君は見苦しい。少し頭を冷やしてもらうといいよ」 花村の顔はいつになく真剣で、瞳は挑戦的な光を帯びている。 菜々子は悟る。 今日、花村が自分をここに連れてきたのは、このためだったのだ。 はじめから予定されていた策略。 エルゴの常連たちが相当な実力者であることは、先ほどのバトルを少し見ただけでもわかる。 つまり、ここの連中を使って、わたしに制裁を加えようと言うわけか。 しかし、菜々子は断る気がなかった。 花村がここまでして仕掛けた策略に対し、持ち前の負けん気が首をもたげたのだ。 「いいわ。やってやろうじゃない」 菜々子は吐き捨てるように花村に答え、立ち上がった。 次へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/812.html
人波行き交う夕暮れの繁華街 ネオン輝きだした街並みの中の大型スクリーン 1.2mm滑空砲を携えて立つ「天使型」が映っている。 『-神姫-感情を持つ15cmのフィギュアロボ-』 画面からはナレーションが流れている その画面の前で ピタリと足を止める人影。 背は高め 髪はオールバック気味、目付きは若干恐めで、スーツのような制服を着た青年 「武装神姫…ねぇ」 あまり興味のない言い方でポツリと一言 と同時に、同級生らしき男もよってきた。背は低めで中肉体型である。 「珍しいね、神姫に興味持つなんて」 茶化すような言い方だった。勿論恥ずかしまぎれに言い返す 「ハハッ勘弁しろよ。あくまでもフィギュアだろ?」 見栄を切って言ったものの 若干あの黒い悪魔型…?だかが気になっていたりもする…。 数日後 朝からすっきりしない雨模様 休み時間に携帯をいじっていると 「聞いたぞ隆斗。神姫に興味持ったんだって?」 ワラワラと野郎共が湧いてきた 「何で湧いてくんだよw」 と突っぱねてみると 「照れる必要はありませんわ☆」 「うぉっ?!」 突然友人の 井原卓三の胸ポケットからアーンヴァルタイプが身を乗り出したので素直に驚いた その天使型はにぱっとした表情で 「お友達、ライバル、自分を高める事のできるものなら皆ウェルカムですもの☆」 と言ってくれたものの 「いや…金が……。」 やはりネックはこの一言で片が付く。しかしそんな一言も盛り上がる空気の中掻き消され、ただの独り言になった。 その日の夜 まだ雨は止まない。雷まで落ちそうだ。そんな中傘をさして小走りな俺。 「まったく…こんな日にバイト延長は勘弁だぜ」 ぶつくさ言いながらも帰路に着く。 途中 ゴミ回収所の前を通る時に ゴトッ 妙な物音がしてビクッとなった。 「な…何スか何スか…」 ドキドキしながらみると 『燃えるゴミ火・金』 と書いてあるにもかかわらず。その場にただ一つある段ボール箱 そこからはビンが顔を出している。 (何だ。日にち無視の不法投棄か…) そろっと覗くと そこには うずくまり足を抱えた。 神姫がいた…。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/141.html
そのよん「初陣」 「なーっはっはっはっはァ! ぅワガハイの最高傑作! バーニング・ブラック・バニー、 略してB3(ビー・キューブ)よ! 今日も最高の成果を期待しておるぞォ!」 「サー、コマンダー」 何でこの人はこんなにハイテンションなんだろうねティキきみはどう思う? 目の前には全身これでもかっ! てくらいにミリタリー調で統一された、特殊なファッションセンスの持ち主が高らかに笑ってる。 一気に思考が平板化し、言葉は口から出ることなく脳内をただ空転するだけ。 「ウサギさんなのですよぉ! すごいのですぅ♪」 ティキきみは何でそんなところを感心してるんだい? 彼の前にはまるで武器が動いてるんじゃないかと思うくらいに武装された、ヴァッフェバニーが仁王立ちしている。 「しょ~~~ねんっっっ! ワガハイのB3に恐れをなし、言葉すら失ったかっっっ!!」 失礼にも人を指差し、そう言い放つ。 あーー言葉を失っているのは確かにあんた様のせいですよそのテンションについていけなくて。 「聞けば少年! 今日が初陣と言うでは無いかっっ! なーっはっはっはっはァ! このぅワガハイと! ビィィィィキュウゥブがっ! 本当の戦いの恐ろしさを教えてしんぜようぅぅぅっ!!」 「サー・コマンダー」 武装神姫のオーナーって、基本アレなのか? ティキには言えないが、僕は少しだけティキ――と言うより武装神姫――のオーナーになった事を後悔したりして。だって、あんなのと同じに思われるのって、ねぇ? 僕と対峙しているお兄さん――今日の対戦相手――が人目を気にすることなく大笑いを続けているその脇を、いかにも慣れた風に店員のお姉さんがものすごく冷淡な声で言う。 「選手の登録をお願い致します」 「あ、ハイ」 そこだけテンション普通なのかよ! 「それでは君も選手登録お願いね」 先ほどお兄さんに見せた冷淡な態度ではなく、にこやかに対応してもらい、僕は胸を撫で下ろした。 今日はいよいよ僕とティキの初陣。近所にある武装神姫取扱店へと足を伸ばす。そこは簡素ながらもバトルが行えるシステムがあったから、数日前にバトルの受付を済ましていたんだ。 最初からリーグ戦とか、そういうのはチョット怖かったので、店舗主催の初級者用バトル大会なるものに参加。 と、気合を入れて来たらこれだもんなぁ…… 『ぬあーはっはっはっはァ! どうだ! どぉぉぉだっ!! この弾幕からは逃れられまいっ!!』 開始早々B3はティキに向かってミサイルの雨をお見舞いしてくれる。 見事なまでに再現された廃墟に無数のミサイルが飛ぶ。 しかしそのミサイルが命中する事は無かった。 ウイングユニットにアームで接続されたレーザーライフルがミサイルのことごとくを嘗めるように掃射。そしてそのままトリガーを引いたままB3にライフルの銃口を向ける。 『そんな見え見えの攻撃があたるものかァっ!!』 その言葉通り、B3は危なげも無くかわす。 「当然だよなぁ。コッチも当たると思ってないし。当たったらラッキーぐらいでしかないし」 ティキとしても避けられる事が前提だったので、正射しながらも移動する。 僕はわりと冷静だった。……正確に言うと興奮してるおかげで、冷静さも増した感じ。 「ティキ、サブシステムとリンクして。……今の君には死角は無い」 『ハイですよぉ♪』 ティキの背部に装着されている情報集析ユニット、実はアレ、神姫のコアと同じくらいの容量と演算能力が備わっている。今は亡き親父が何処から手に入れたのかは謎だが、僕はそれを有効に使わせていただく事にした。 コア二つ分の演算能力を有したティキは、情報収集、現状把握を集析ユニットに任し、自身はそれに基づいて適格に動く事だけに専念する。 するとどうなるかと言うと、ティキは反応行動の鬼と化す。市販品(それは確実)なのにもかかわらず、ティキは反応が飛びぬけていて、それを十分に活かす機体性能を持っていた。 元々マオチャオは、敏捷性に優れているのだけれども。 『いっくでーすよぉ♪』 ウイングユニットの機動力だけではなく、朽ちた建物の壁を蹴りながら勢いをつけ接敵を開始する。 彼我距離を縮められる事を嫌ってか、ガトリングガンを打ち続けながらジリジリと後退するB3。 しかしその事ごとくをティキはかわしながら距離を縮めてく。壁を蹴って移動の勢いを増すのと同時に、壁を蹴る事でジグザグとフェイントの様な動きをして近づいているんだから相手も大変だろう。 大体一発でも、当たり所が悪ければティキはKOしちゃうんだから、当たるわけにはいかないんだ。機動性を重視して、思いっきり軽装にしてあるんだから。 『ヤツは3倍の速さで動けるというのかぁぁぁっ!』 『ティキは赤くも無ければ角も無いですよぉ♪』 相手のお兄さんと僕には意味のわからない会話を交わすティキ。 ……チョットだけ疎外感。 そんな間にもティキとB3の距離は縮まり、瞬く間に白兵距離。スラリと西洋剣を抜いたティキと、ガトリングを投げ捨てるタイミングさえ失いコンバットナイフで応戦しようとするB3。 ひゅん 空気を切り裂くような音が聞こえたのは気のせいか。 そこにはコンバットナイフを振り切ったB3と、見事にそれを屈んでかわし、B3の喉もとに剣を突きつけているティキの姿があった。 『当たらなければどうという事は無いのですよぉ☆ 勝負ありですぅ♪』 にこやかに笑うティキに、B3は不敵な笑みを返す。 がしゃん そう聞こえたかと思った瞬間、ティキは反応していた。 ぱんぱんぱん 続いて聞こえる軽い発射音。 『おイタはダメなのですよぉ~』 投げ捨てられなかったガトリングガンをB3が構える前に、ティキは左手に持っていたリボルバーでそのガトリングガンを打ち抜いていた。 B3は諦めの表情で、両手を上げた。 「しょーねんっ! 今日はヒッジョーォに有意義であったァ!」 にこやかに笑みを浮かべながら握手を求めてくるお兄さん。テンションは未だ高めだが、バトル前に比べると幾分か落ち着いて見える。 「こちらこそ、ありがとうございます」 僕は素直にそれに答える。 「うむ! しょーねんんっ! なかなかに見所があるぞ! 今日の試合を糧に、ますます精進するがイイッ!」 んん? 「それではまた戦場で会おうッ! なーはっはっはっはっ!」 そういってそのお兄さんは背を向けた。 ……なんだか僕らが負けたみたいになってないか? 僕らは釈然としない思いを抱えつつ、高らかに笑いながら立ち去るミリタリールックのお兄さんを見送った。 終える / もどる / つづく!
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1579.html
「しかしフォートブラッグの外骨格に、そのような機能が搭載されていたとは驚嘆すべき事実です」 「それはもう、俺に良し、お前に良し、皆に良しの魂を引き継ぐ武装神姫ですから」 「なるほど、あなたに対し出力マイクから神姫物質を排出する前と後には『サー』……いえ、『マム』とつけるべきでしょうね」 「ところでドーナツ食べますか?」 「この流れでそれを頂くと、同僚が連帯責任で腕立て伏せをする目の前で食べないといけなくなりそうなので、お気持ちだけ頂いてご遠慮申し上げます」 「そうですか。 ところで話を戻しまして、フォートブラッグのバックパックで正座をするのが邪道なら、逆に考えてみてはどうでしょう?」 「と、仰ると?」 「バックパックで正座をするのではなく、バックパックを用いて正座及び土下座をさせるというのは?」 「土下座でなく座礼です。 ……なるほど、矯正装置として活用するのですね」 「むしろ強制装置で」 「焼いた鉄板の上で?」 「10秒は必要ですね」 「基本ですよね」 「今度は料理のお話でしょうかねぇ?」 「違うと思う、絶対違うと思う!」 ○参考資料:「フルメタルジャケット」「賭博黙示録カイジ」 <戻る> <進む> <目次> 犬子さんの土下座ライフ。 クラブハンド・フォートブラッグ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1104.html
「さ~て、今週のねここの飼い方は~?~なの」 「何時流に乗っかったボケしてるのよ……」 「てへへ。一回やってみたかっただけなの♪」 「……まぁ、いいけどね。 それで今回ですが、コミックマーケット72で頒布される 『武装神姫ねここの飼い方02』の新着情報をお届けしたいと思います」 「ドンドンぱふぱふー、なの~♪」 「さて今回収録されているのは、『そのなな』、と『そのきゅう~そのじゅうよん』までになっています。そのはちがないのは前回のクライマックスに持ってきたため、ということに」 「劇場版は~?」 「うん、最初はそっちも入るはずだったのだけれど、ある事情で思ったよりページが増えてしまったので今回はカットすることにしたの。それはまた次回ね」 「えー、ねここそっちも楽しみにしてたのにー! ひどいよぅ、みさにゃぁん……」 「あはは、ごめんね。でもその代わり、前回の数倍の加筆修正をしているからそれで満足してほしいかな。エルゴトーナメント戦なんか7割は新作なんだよ。」 「あー、そうなのっ。エストちゃんとも戦ったしぃ、それにぃココちゃんもぉ~」 「それ以上はネタバレになるから言っちゃダメ」 「えー、ねここ言っちゃいたいのー! 「しょうがないわねぇ・・・じゃあ少しだけよ」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ さてさて、一回戦のお相手はどんな娘なのかな、と。 「フフフ……それは、私です!」 「にゃ?」 明朗快活な声が、反対側のコンソールから届けられてくる。 ねここと2人、そちらに目を向ければ、操作ボードの上に腕を組み、カッコつけているのか、 斜め45度の角度でこちらを見つめている神姫が1人。 頭部の特徴ある飾りからストラーフ型らしいその神姫は、足首まである豪奢な、黒衣のビロートのマントを身に纏い、 またその瞳は前髪に隠れていて、口元だけがニヤリと不敵な笑みを浮かべている。 しかも何故か彼女にはスポットライトが煌々と当たっていて、バックの赤に黒がよく映えるわね……って、えぇ? 「うぉっ、まぶしっ!?」 「何時の時代のネタをやっている、この馬鹿弟子がぁ!」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「……えー、たったこれだけなの……?」 「全部やっちゃ宣伝の意味がないでしょ。我慢するの」 「うぅ……はぁい、なの」 「いい子ね、後で杏仁豆腐作ってあげるから。それと今回、なんとあのGの人にゲスト原稿を頂きました!」 「おおー。すっごいのー♪」 「今まで謎にされていた、ねここと店長さんたちの裏の顔との出会い、その秘密が今大公開されるのです」 「面倒だからかかなかっただけとも言うの」 「う、言いにくいことをハッキリと言うわね……とにかくっ、結構な長編なのでご期待ください」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「はいはい。お客さん、今日はもう閉店なんですが…急ぎですか?」 「店長さん、雪乃ちゃんが!」 シャッターを上げたそこには見知った顔。ウチの常連さんである風見美砂ちゃんその人が その表情を曇らせて立っていた。肩の定位置にはねここちゃん。 そしてその手には……夕方店を後にしたゆきのんが眠っていた。 一目で解るくらい損傷している。 そして、その傷には見覚えがあった。 「辻斬り神姫……」 低く呟く。 「雪乃ちゃんの帰りが遅いから心配になって探したら……近くの公園で倒れてて」 「店長さん、お願いなの! 雪乃ちゃんを助けて欲しいの!」 「ああ、言われるまでもねぇ。任せろ!」 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「あぅあぅ、ゆきにゃんが、どうなっちゃうのっ!?」 「それは本編をお楽しみ、ですよ」 「うぅ、商売上手なのぉ……」 「それでは、『武装神姫ねここの飼い方02』を、ご期待くださいっ」 「尚、現在『虎の穴』にて委託販売中となっています。 虎の穴通販ページ 「地方の方でも通販で確実に購入できますよっ」